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民泊と税務の疑問点(民泊は相続対策になる?)

1 民泊とは

 住宅宿泊事業法が施行されるとともに、旅館業法の改正による許可基準が大幅に緩和されました。これにより、いわゆる民泊は、旅館業法の適用を受ける民泊と、旅館業法の適用はないが住宅宿泊事業法の適用を受ける民泊の、2種類の形態に分かれて、これら以外の違法な民泊(無許可営業者)には旅館業法の六月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられることになりました。

2 旅館業法の改正

 従来の違法民泊を合法化するために、旅館業法の許可基準が次のように大幅に緩和されました。

(1) 最低客室数の基準が廃止され、客室が1室でもよいこととなった。

(2) 洋室の構造設備の要件が廃止され、1客室当たりの最低床面積が7㎡以上となった。

(3) 次の3つの要件を備えているときは、玄関帳場(フロント)等を設置する必要がなくなった。

 ① 緊急の場合、おおむね10分程度で職員等が駆け付けられる体制がとられていること。

 ② 自ら設置したビデオカメラにより宿泊者の本人確認や出入りの状況が確認できること。

 ③ 鍵の受け渡しを適切に行うこと。

 消防用設備等の設置義務等はありますが、上記のように、住宅やアパートを旅館業法の適用を受ける民泊とすることができることから、後述の住宅宿泊事業法の180日の営業制限は受けないので、年を通じて、無制限に民泊事業を行うことができます。

 この場合の税の取り扱いは、固定資産税は住宅用ではないので小規模住宅用地の適用がなくなります(固定資産税が6倍以上になる可能性がある)が、所得税では事業所得として青色申告すれば青色申告特別控除、青色事業専従者給与の適用が受けられ、事業所得に損失があれば他の所得と損益通算が受けられます。また相続税では民泊事業用の宅地は特定事業用宅地である小規模宅地に該当し、400㎡まで80%の相続税評価額の減額が受けられます。

3 住宅宿泊事業法による民泊事業では

 住宅宿泊事業法が施行され、総務省・国税庁から税の取り扱いの通知・情報が出されていますが、その取扱いについて検討しますと、以下の通りと考えられます。

(1) 固定資産税について

 平成30年2月16日の総務省自治税務局固定資産税課長の「住宅宿泊事業の用に供する家屋又はその部分の敷地の用に供する土地に対する住宅用地特例の適用について(通知)」によれば、「特定の者に継続的に居住させることを目的として長期賃貸の募集が行われ、そのために管理が行われている建物又はその部分が人の居住の用に供するものに当たる」ことの実態を適切に把握し、固定資産税の課税事務の適正な執行を各都道府県及び市町村の固定資産税の担当者に、通知している。

 よって、老夫婦や一人住まいのご自宅の空き部屋を民泊事業とする場合、週末及び休日等だけ民泊事業にする場合、別荘やセカンドハウスの使っていない期間を民泊事業にする場合やアパート等の賃貸業に民泊事業を併営した場合は、小規模住宅用地の課税標準となるべき価格を6分の1に圧縮(軽減)することができなくなる部分が生じる場合があるので、その部分の固定資産税の負担が増加します。但し、固定資産税は民泊事業による所得計算の必要経費には算入できます。

 なお、民泊事業は、個人事業税では第1種事業に該当すると思われますが、不動産貸付業ではなくなるので10部屋、10棟等の基準はありません。よって事業種控除額の290万円を超えた民泊事業の所得には個人事業税が課税されます。但し、個人事業税は必要経費に算入されます。

(2) 消費税について

 平成30年6月13日の国税庁の「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」の「7消費税の課税関係」にあるように、消費税の課税対象となります。よって、住宅の貸付は消費税の非課税対象となっていますので、前々年の消費税の課税売上が1,000万円をを超える場合は、消費税の納付義務者となります(課税売上が継続して1,000万円以下の免税業者の方は消費税の申告・納付義務はありません)。なお、消費税は必要経費に算入されます。

(3) 所得税について

 上記2の国税庁の(情報)の「1所得区分」では、住宅宿泊(民泊)事業は、宿泊者の安全等の確保や一定程度のの宿泊サービスの提供が義務付けられ、利用者から受領する対価には、部屋の使用料のほか寝具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、観光案内等の役務の提供の対価が含まれていることから、不動産所得にはならず、原則として雑所得に区分されるとしています。しかしながら、アパート収入だけの方や国民年金だけの収入のある方が専ら民泊事業により生計を立てているなど、所得税法の事業として行われていることが明らかな場合は、事業所得に該当するとしています。

 従って、所得税法上の事業に該当すれば、不動産所得の5棟10室の基準は関係なくなりますので青色申告にすれば青色申告特別控除(65万円)、青色専従者給与の適用も受けられます。また不動産所得ではないので土地の借入金の支払利息を赤字の場合でも全額損益通算することができます。

(4) 相続税について

 上記の国税庁の(情報)には相続税の取り扱いがありませんが、小規模宅地の相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4の適用について、民泊事業用宅地は同条3項1号で除外されている「不動産貸付業その他政令で定めるもの」には該当しないと考えられます。「その他政令で定めるもの」は同法施行令第40条の2第6項においては「駐車場業・自転車駐車場業及び準事業」に限定され、「準事業」については法令・通達の定義はないようですが、同法通達69の4−13不動産貸付業の等の範囲)には民泊業は掲げられておらず、また、同通達69の4-14(下宿等)では「部屋を使用させるとともに食事を供する事業は、不動産貸付業その他政令で定めるものに当たらないものとされています。

 従って、民泊事業用宅地は特定事業用宅地である小規模宅地に該当する場合も考えられます。この場合、100分の50の評価減・200㎡の貸付事業用宅地ではなく、100分の80の評価減・400㎡の適用が受けられることも考えられます。

(5) 住宅宿泊事業法で民泊事業として認められる家屋は、①現に人の生活の本拠として使われている家屋、②入居者の募集が行われている家屋及び③随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋 が対象となりますが、③の場合には年に1回以上居住に使用する別荘、セカンドハウス(居住期間は問われていない)のほか、生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家、転勤、相続等による一時的な空家 が具体例としてガイドラインに掲げられています。(但し、投資用マンションは該当しないとされていますのでご注意を)

 よって、広い自宅から子供たちが独立して夫婦だけもしくは独り住まいとなったとき、残った空き部屋を民泊事業にする。複数住宅を持っていて春と秋は東京、夏は避暑地(例えば北海道、軽井沢等)、冬は避寒地(例えば沖縄)で居住する場合(居住面積は関係ないのでワンルームマンションでもOK)空いている期間を民泊事業にする。1棟の貸付事業用マンション全体を民泊事業対象として併営し、入居募集広告中の空室部分を民泊事業にする。などが、具体的な民泊事業として考えられます。

 また、宿泊日数の上限180日は、住宅宿泊事業者ごとではなく、届出住宅ごとに算定するのこととなっていることから、複数住宅を持って季節ごとに住まいを変えている方の場合、それぞれの家屋での空いている期間の民泊日数で算定をしますので、全体として通年民泊事業を継続しているとすることも可能と考えられます。

4 民泊業を上手に活用しましょう

 民泊業は、上記のように様々なメリット・デメリットがいろいろあるようですが、規模が小さく所得税法の雑所得となるときは、固定資産税等の負担が大きく増える可能性があること、赤字が他の所得と損益通算できないことなど、デメリットも多いのでよく検討されたほうがよろしいかと考えます。

 相続対策として考えるときは、旅館業法の適用を受ける民泊にしたほうが、節税効果は高いといえますが、建物が建築基準法をクリアして、消防設備も備える必要があることから、住宅、アパートから転換するには、かなりの費用がかかり、そのための費用を惜しめば、許可されなかったり、許可を取り消されたりしますのでご注意を。

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