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1 相続にあたって、相続人間で具体的な相続財産ついての争いは絶えません。
民法で、法定相続分等は次のように定められています
① 相続人が配偶者のみのとき
・配偶者 1/1(全部)
② 相続人が配偶者と子の場合(子には実子、養子を含む)
・配偶者 1/2 ・子一人当たり 1/2×1/子の数
③ 相続人が子の場合(配偶者がいないとき、子には実子、養子を含む)
・子一人当たり 1/子の数
④ 相続人が配偶者と親の場合(子等の直系卑属がいないとき、親には実親、養親を含む)
・配偶者 2/3 ・親一人当たり 1/3×1/親の数
⑤ 相続人が親の場合(配偶者と子等の直系卑属がいないとき、親には実親、養親を含む)
・親一人当たり 1/親の数
⑥ 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合(子等の直系卑属、親等の直系尊属がいないとき)
・配偶者 3/4 ・兄弟姉妹一人当たり 1/4×1/兄弟姉妹の数
⑦ 相続人が兄弟姉妹の場合(配偶者、子等の直系卑属、親等の直系尊属がいないとき)
・兄弟姉妹一人当たり 1/兄弟姉妹の数
相続財産の分配の調整として次のような制度があります。
⑧ 特別受益
相続人が、被相続人から生前贈与を受けた財産は、相続財産に加えられ(持戻し)、遺産分割の対象になります(遺産分割後の相続分から特別受益を引いた額が具体的相続分となります。)。なお、被相続人は特別受益の持戻しの免除の意思表示ができます。さらに婚姻20年以上の夫婦間の居住用土地家屋の贈与は持戻しの免除の意思が推定されています。
また、相続税の対象となる生前贈与には、相続開始前3年内の生前贈与と相続時精算課税を選択した場合の生前贈与があります。その他に遺産分割の対象とならないが相続税の対象となるみなし相続財産(被相続人の死亡保険金、死亡退職金)があります。
したがって、遺産分割の対象財産と相続税の対象財産とは微妙に異なっています。
⑨寄与分
相続人が、被相続人の事業に労務を提供又は財産を給付した場合の他、被相続人の療養看護その他保相続人の財産の維持又は増加に特別な寄与した場合、遺産分割協議で定めた寄与分の額を遺産分割の対象となる相続財産から控除されます。(遺産分割後の相続分に寄与分を加えた金額が具体的相続分となります。)
なお、寄与分は相続税の対象となる相続財産から控除されることはありません。
⑩ 遺言
被相続人が、被相続人の相続財産を自由に分配、処分できる(包括遺贈、特定遺贈)権能で、被相続人の死亡を原因として、相続人、法定相続分にかかわらず、相続財産の帰属先を自由に(任意で)決めることができます。しかし、次の「相続人の遺留分」の規定に反することはできません。
⑪ 遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人の最低の相続分の権利の保障として、上記①、②、③、④及び⑥の各相続人の各法定相続分の1/2(⑤の場合は1/3)の相続財産の分配を受ける権利を遺留分といいます。
遺留分の対象財産は、相続開始のときの相続財産に被相続人が贈与した財産を加えた金額から相続のときの被相続人の債務の額を差引いて算出した金額に、相続開始前1年以内に被相続人が贈与(相続人に対する贈与は10年)した金額並びに遺留分権利者に損害を加えることを当事者双方が知っている場合の贈与(時期は問わない)した金額を加算した金額です。
なお、上記⑧の特別受益がある場合は、全額が遺留分の対象財産となりますので、特別受益の金額も遺留分の対象財産に加算する必要があります。
⑫ 遺留分の侵害請求
相続人の具体的相続分が、上記⑪の遺留分の額に満つるまで、対象財産を取得した遺贈・贈与を受けた受贈者にたいして、遺留分権利者たる相続人は、当該財産の価額の金銭の請求ができます。
⑬ 相続人の廃除
遺留分を有する相続人が、被相続人に対し虐待したり、重大な侮辱を加えたり、その他相続人に著しい非行があったときは、被相続人が、裁判所に請求して、相続人の地位から廃除することができます。(これにより、当該相続人は、遺留分を含めた相続権を失います。)この廃除があったときは、相続権を失った相続人の子が相続人となります。(代襲相続)
⑭ 代襲相続
被相続人の子である相続人が、相続開始前に死亡したとき、廃除されたとき、被相続人や相続の先順位者、同順位者を殺害もしくは殺害しようとして刑に処せられる等の欠格自由に該当し相続権を失ったときは、その者の子が被相続人の直系卑属(孫)であれば、相続権を代襲して相続人となります。
代襲相続については、被相続人の直系卑属(子・孫・玄孫・・・・)であれば相続権を順次代襲できますが、相続人が兄弟姉妹のときは、その兄弟姉妹の子が1代限りで相続権を代襲できます。(なお、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、兄弟姉妹の代襲者には遺留分はありません。)
⑮ 特別の寄与
上記の相続人でない、被相続人の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)の方が、被相続人に対する療養看護、その他労務の提供により、被相続人の財産の維持又は増加に貢献するなど、特別の寄与ががあった場合、相続人に対し特別の寄与料を金銭で請求できることになりました。(なお、特別の寄与者の相続税は2割加算の対象となります。)
⑯ 配偶者居住権
被相続人の生存配偶者が、被相続人所有の建物に相続開始時に居住していた場合に、a 遺産分割等により配偶者居住権を取得するとされたとき、b 配偶者居住権が遺贈されたとき、c 被相続人と配偶者の死因贈与契約で配偶者居住権を贈与されたとき、当該建物を取得した相続人に対し、配偶者が当該建物の全部を無償で使用収益できる権利です。(詳しくは別の項をご覧ください)
2 誰でも財産はもらいたいと思うのが当然ですので、法定相続分の主張は当然です。ところが上記1⑧の特別受益、⑨の寄与分や⑮の特別の寄与が絡むと、事は複雑になります。特に兄弟姉妹間やその配偶者間では被相続人の特定の相続人への偏愛、溺愛による感情のもつれや、被相続人の介護の苦労による感情のもつれもあいまって、特別受益、寄与分及び特別の寄与の算定が難しくなり、結局長期の裁判により遺産分割を行う例も多くあります。
また、相続人以外の特別な方に、財産を分け与えてあげたいということもあるでしょう。
3 相続をめぐるこれらのトラブルを避ける方法としては、次のようなものがあります
① 早めに生前贈与をしておく
② 遺言書を作成しておく(できれば公正証書遺言が望ましいが、法務局の自筆証書遺言の保管制度を利用することも、極めて便利です。)
③ 財産の全部もしくは一部を相続人に信託する契約を締結しておく
④ 一般社団法人を設立し、徐々に財産を移管し、資産管理法人とする。
これらの方法については、すでに別の項目「認知症に備えて財産管理をするとき」で記していますが、これらの対策も、遺留分の侵害請求には対抗できません。(廃除をしても、代襲相続があれば代襲相続人の遺留分があります。)
しかし、①、②の方法は有効です。相続人の遺留分を残した財産は自由にできますので、早めの生前贈与も活用できます。ただし、遺留分の侵害請求や、特別の寄与の請求の対象になる場合もあるので、ぜひ遺留分・特別の寄与が、相続人・特別の寄与者に残らないように遺言書を作成したほうが、相続をめぐる争いが生じる危険性が少なくなります。
4 知らないうちに相続人になっているときは要注意です。
相続人になる順番は、上記1の①〜⑦で記載しましたが、配偶者以外の相続人の順番は、第1順位は被相続人の子(もしくは、その代襲者である孫以下の直系卑属)、第2順位は被相続人の両親、第3順位は被相続人の兄弟(もしくは、その代襲者である甥・姪)となっています。(配偶者は常に相続人となります。)
被相続人に第1順位の子がおらず、第2順位の被相続人の両親が死亡していたときは、第3順位の被相続人の兄弟姉妹が相続人となり、その兄弟姉妹が死亡しているときは甥・姪が相続人となります。これはよくある話で、甥・姪にしてみれば、全く知らない会ったこともないおじ・おばの相続人となり、その財産を相続できることになります。
これはラッキーかというと、そうばかりではありません。相続は被相続人の財産である資産と負債を引き継ぐものなので、負債より資産が多ければいいのですが、資産より負債が多ければ、返しきれない負債を相続人が返済する義務を負うことになります。
この場合のため、民法922条以下で限定承認、同938条以下で相続の放棄の制度を設けています。限定承認は、相続人全員が共同してすることができ、被相続人の資産で被相続人の債務を弁済したのちに相続財産となる資産が残れば、その資産を相続し、負債が残れば相続しないとする制度です。相続放棄は、初めから相続人にならなかったこととされる制度です。
そして、この相続放棄、限定承認は相続人が自己のために相続があったことを知った日から3か月(熟慮期間といわれています)以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述もしくは相続財産の目録を作成し限定承認の申述とともに提出する必要があります。なお、この熟慮期間の3か月は極めて短いので、家庭裁判所に伸長(延長)の申請をすることができます。
限定承認があったときは、そこで相続手続きが終了しますが、相続放棄があったときは、とても面倒な事態が起こることがあります。
相続放棄は、相続人が初めから相続人にならないこととなります。その結果、上記の相続人の第1順位の人が全員相続放棄したときは第2順位の人が相続人となり、第2順位の人が死亡もしくは相続放棄したときは第3順位の人が相続人となります。その結果、第3順位の兄弟姉妹が死亡していればその人の代襲者である甥・姪が相続人になってしまうということです。つまり、その甥・姪にとっては、知らないうちに、会ったこともない被相続人であるおじ・おばの相続人となり、その被相続人の負債の弁済義務を相続してしまう事態が生じてしまうことになります。
ただし上記の熟慮期間は、相続人となってしまった甥・姪が、被相続人の相続人となったことを知ったときから3ヶ月なので、被相続人の死亡(相続の開始日)や相続放棄があった日(相続人となってしまった日)は熟慮期間の開始日とはなりませんので、被相続人の債務の弁済の督促状などにより相続人となってしまったことを知った日が熟慮期間の開始日となります。(後に、相続開始があった日の証明に必要となりますので、これらの書類を保存し、また電話等で知ったときはその日付をメモしておいたほうがいいでしょう。)
したがって、知らないうちに相続人となってしまった人は、この熟慮期間のうちに必ず家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。相続放棄の申述には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と住民票の除票及び相続人の戸籍謄本等を添付する必要があり、とても面倒なことですが、これを怠ったまま、熟慮期間の3ヶ月が過ぎると相続の単純承認をしたものとみなされ、被相続人の債務の返済義務を相続することになります。
なお、家庭裁判所の「相続放棄の添付書類一覧表」では、「相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)の末日が迫っている場合は、添付する書類が全部そろっていなくても、申述書とその時点でそろえられた添付書類を先に提出して受付手続きを済ませてください。」との記載もあるので、必ず熟慮期間内に相続放棄の申述書を提出することが肝要です。
5 遺産分割の期間制限(相続開始から10年)の創設
近年問題となっている所有者不明土地の相続登記等の促進等のため、令和3年に民法、不動産登記法、非訟事件手続法、家事事件手続法等が改正され、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が創設されました。(施行は令和6年からの予定?)
不動産登記法の改正では、相続登記の申請が義務化され、遺言、遺贈や遺産分割により不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請することが義務付けられ、正当な理由なくその申請を怠ったときは10万円以下の過料に処することとされました。
民法では相隣関係の改正や不在者財産管理人、相続財産管理人等の改正が行われ、特に遺産分割に関しては実質的な相続開始後10年という期間制限が設けられます。
具体的には、「相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過する遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)による。(改正民法904条の3)」こととされました。
つまり10年を経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなることになります。但し、10年経過前に家庭裁判所に遺産分割請求をしているとき、期間満了前6か月以内に遺産分割請求することができないやむを得ない事由(被相続人が遭難で死亡したがその事実が確認できず遺産分割請求ができないことなど)がある場合において、この事由消滅後6か月以内に家庭裁判所に遺産分割請求をしたときは、10年経過したのちの審判では特別受益や寄与分の主張を認めた遺産分割の審判ができる例外があります。もっとも、10年が経過しても、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意したケースでは、具体的相続分による遺産分割が可能とのことです。(令和3年9月法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」46ページ参照)
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