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個人事業を法人成させるときの疑問点(一般社団法人は得?)

1 法人成のメリットとしては次のようなものがあります。

(1)事業による利益が、ご本人及びご家族に対する給与(役員給与)とすることができることから、所得を分散することができ、かつ、全員が給与所得控除の適用を受けられるため、課税される所得を減少させることができる。

(2)社会保険が強制適用となることから、健康保険、厚生年金を標準報酬に従って支払うことになるが、その半額を法人の福利厚生費として経費に計上できる。

(3)所得税法の累進税率に比し、法人税の累進税率の方が低くなるケースが多い。

2 法人成のデメリットとしては次のようなものがあります。

(1)法人の所得が赤字もしくはゼロであっても、法人住民税の均等割(最低毎年7万円)の税負担が生じる。

(2)社会保険が強制適用となるので、従業員の社会保険の金額の半額を法人が負担しなければならない。

 また、役員・従業員が60歳を超えても、70歳までは厚生年金の保険料を、75歳までは健康保険の保険料を支払わなければなりません。

 さらに、給料が安くても(例えば5万円以下でも)健康保険の最低月額5,782円もしくは6,699円、厚生年金の最低月額17,124円の保険料を支払わなければなりません。(半額法人負担)

3 法人にも、いろいろと種類があり、どのような法人を活用するかで、様々な場面で大きく違いますが、大きく分けて次の3つに分かれます。

  第1 営利を目的とし、会社法の規定により誰でも設立できる株式会社・合同会社・合資会社・合名会社

  第2 公益事業を目的とし、目的に応じた法律により、目的に応じた所轄官庁の許認可を得て設立できる各種公益法人(公益社団法人・公益財団法人・認定特定非営利活動法人等)

    第3 これらの中間の性質を有する一般社団法人、一般財団法人等があります。

 第2のタイプは、税制上原則として法人税は非課税とされ、34種類の収益事業を営むときは収益事業に係る所得(収益事業に係る収入―収益事業に係る経費)のみに法人税等が課されます。

 第1のタイプと第3のタイプは、法人の全所得に対して法人税等が課されます。

4 法人の設立のとき、法人の規模を大きくするときには、財産の拠出が必要で、また利益が生じた時には利益の分配、解散した時には法人の残余財産の分配(帰属)の問題が生じます。

 まず財産の拠出時には、拠出者の譲渡(みなし譲渡)による所得税の課税、及び拠出を受けた法人側の受贈益による法人税の課税、並びに持分等の無い第2・第3のタイプの法人に対する相続・贈与税の課税が生ずる場合があります。

 つぎに、第1のタイプの法人は当然に利益の配当をできますが、第2・第3のタイプの法人には持分等がないので利益配当はできません。

 法人の残余財産については、第1のタイプの法人は当然に株主・出資者に残余財産の分配請求権があります。

 第2・第3のタイプの法人は持分等が無いので、一般的には「定款の定め」、各種「総会の決議」

により残余財産の帰属者を決定しますが、多くの公益法人は「国、地方公共団体、他の公益法人等へ残余財産が帰属する」旨の定款の作成を義務付けられています。(最終的に処分先が決まらないときは国庫へ帰属)

  平成30年の相続税法の改正で、第3のタイプの法人のうち、特定一般社団法人等(法人税法の同族会社に類する概念を、相続税法において、3親等以内の親族及びその関係者によって支配しているとされる一般社団法人及び一般財団法人を特定一般社団法人として導入)制度が新たに創設され、当該法人の同族理事の死亡による相続のとき、当該法人の純資産のうちの被相続人たる同族理事の持ち分に相当する額が当該法人に相続されるという考え方で、当該持ち分相当額を相続財産に加え当該法人に相続税を課税されることになりました。

 特定一般社団法人等とは次の要件のいずれかに該当する一般社団法人、一般財団法人です。

 イ 相続開始直前の時点で、同族理事の人数が総理事の人数の総数の二分の一を超えている

 ロ 相続開始前5年間のうちに、上記イの状態が3年以上ある

 従って、理事の決定権を持ち、法人の意思の決定機関である一般社団法人は社員総会、一般財団法人は評議員会の構成員である社員、評議員については上記要件に掲げられていないので、同族理事の人数を理事総数の二分の一以下にすれば、これによる相続税の課税をされることはありません。

5 法人が財産として、相続の対象となるかについては、第1のタイプの法人では株式、出資等を財産評価通達に従って算出された価額が相続税の対象となる財産となりますが、第2・第3のタイプの法人には持分がありませんので、相続税の対象となる財産とはなりません。

 ただし、返還義務のある「基金」については、基金の拠出者の相続財産になります。(基金は社団法人の特有の制度です)

6 どの法人タイプの法人が、個人事業の法人成として使いやすいかについては、第2のタイプは設立運営等に対して官公庁の関与が多く、様々な制約があるので、気軽に使うのは難しくなります。

 従来から、第1のタイプを使うのが一般的ですが、この場合には株式・出資等の持分が相続財産の対象となり、また相続のときに持分が分散され、経営権の継承が危うくなる危険性が生じるときがあります。

 では、第3のタイプ特に一般社団法人の場合はどうかというと、次の特徴があります。

 ① 持分がないので、相続の対象とはならず、相続税の負担はなく、経営権の相続による分散もない。

 ② 経営権は社員総会が持ち、社員は1名以上いればよく(定款に記載)、社員は法人でもよいこととされ、社員の新規加入は社員総会の決議によることから、あらかじめ社員を親族もしくは同族法人で固めておけば、経営権(社員権の譲渡という概念はない)の分散は生じず、親族による経営権の承継が確実なものとなります。

 ③ 法人が事業をするにあたっての財産の拠出には、非常に難しい問題(所得税法のみなし譲渡課税、持分なし法人に対するみなし贈与課税、法人の受贈益課税による多大な税額負担が生じる危険性)があります。しかし、基金制度を上手に活用し、まず金銭等を基金として拠出し、この金銭等により、事業に必要な機械器具備品を購入し、利益の中から基金を返済してゆくことも可能です。

 なお、平成30年の相続税法の改正で、役員(理事)等に占める親族の割合が三分の一以下となる定款の定めがない場合等は、同族会社の行為計算の否認の規定が適用される(相続税及び贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる)可能性があります。

※ただし、含み益のある不動産・有価証券を拠出財産とすることは、時価によるみなし譲渡課税等の多大な税負担が生じることがあるので注意を要します。

7 以上の検討により、一般社団法人がいかに使い勝手の良い制度であるか理解いただけると思います。

   以下一般社団法人の活用例を若干列記します。

   ① 個人事業の法人成

   ② 株式会社の安定株主、合同会社、合資会社、合名会社の社員

   ③ 信託の受託者

   ④ 永続的な財産管理法人

   ⑤ 任意後見人

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