〒142-0041 東京都品川区戸越三丁目11番12号 杉本ビル102
都営地下鉄浅草線戸越駅 徒歩5分
東京急行大井町線戸越公園駅 徒歩5分

医療法人は、損か?得か?

1 平成26年の税制改革大綱で、「医業継続に係る相続・贈与税の納税猶予等の創設」という項目があります。

 これは、平成19年の医療法の改正で新設された社会医療法人を想定した「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律に規定される移行計画について厚生労働大臣から認定を受けた医療法人」である「認定医療法人」の認定を受ければ、いわゆる経過措置型医療法人(一般の持ち分のある社団医療法人及び出資限度法人)の持ち分を相続・遺贈で取得したときの相続税を、上記移行計画の期間満了まで納税猶予し、その期間内に持ち分のすべてを放棄した場合には猶予税額を免除するという制度です。

 一見すると、事業承継税制の適用のない医療法人に、同様の納税猶予及び猶予税額の免除の特典を与えるかのように見えますが、全く内容が違います。

 事業承継税制は、中小企業のオーナーが、その親族(主として子孫)へ円滑に事業が承継できるように相続税を納税猶予し、一定の場合猶予税額の免除がされる制度(当ホームページの「事業承継」参照)ですが、医療法人制度では、救急医療やへき地医療、周産期医療など良質かつ効率的な地域に必要な医療を提供する体制を確保するため都道府県知事の認定を受けた「社会医療法人」を理想形として、社会医療法人、財団医療法人もしくは持ち分のない社団医療法人に事業承継させようとするもので、オーナー一族の支配する経営への事業承継をさせない制度を目標としているようです。(持ち分なし医療法人への移行促進策)

 ちなみに社会医療法人の都道府県の認定要件は次もとおりです。
①同一親族等関係者の制限(役員の3分の1、社員の3分の1、評議員の3分の1を超えていないこと)
②救急医療等確保事業の実施(施設等の物的要件、業務を行う体制等の人的要件、業務の実績)
③厚生労働大臣が定める公的な運営に関する要件に適合
④解散時の残余財産の帰属先の制限(国、地方公共団体又は他の社会医療法人に限る)

2 個人病院の法人成による子孫への財産承継では、相続税の納税猶予、猶予税額の免除はない?

 現在、新たに法人設立できるのは、上記の社会医療法人、財団医療法人もしくは持ち分のない社団医療法人のほかに、基金拠出型の持ち分のない一般社団医療法人だけです。

 したがって、一人医師医療法人の設立して、子孫への財産承継が可能なのは、基金拠出型の持ち分のない社団医療法人ということになります。

 ただし、この場合、拠出した基金額の返還義務の定めがあることから、基金額は相続財産となりますが、上記1の相続税の納税の猶予及び猶予税額の免除する制度の適用はありません。

 また、医療法人理事長の土地を医療法人の診療所として賃貸している場合であっても、基金拠出型は持ち分の定めがなく出資の概念がない法人なので、小規模事業用宅地の特定同族会社事業用宅地等には該当しなくなり、400㎡までの80%の評価減の特例は受けられないことになります。(藪蛇です。法人成しないほうが良かったということになりかねないです。)
 もっとも、貸付事業用宅地にはなりますので、200㎡までの50%の評価減の特例は受けられます。

 他方、経過措置型医療法人(平成19年3月31日以前に設立された出資額限度法人、持分あり社団医療法人)であれば、出資の10分の5超を所有するなどの要件をクリアすれば、特定事業用宅地として400㎡までの80%の評価減の特例は受けられます。

3 MS法人(メディカルサービスの会社)を上手に使いましょう。

  医療法人の非営利化は、社会保障・税一体改革の流れの中で望ましいこととされています。また、社会医療法人は、公益法人として税法上取扱われることから、医療法における付帯業務及び収益事業として行うもの以外の医療保険業が、公益事業として収益事業課税の対象から除かれますので、これに係る所得については法人税が課税されないことになります。

 したがってこれから設立する医療法人は、社会医療法人が最も有利です。この設立には厳しい要件と監督官庁からの規制を受けることになりますが、むしろ医療法人経営の社会的要請等を鑑み、好ましいことと割り切り、あとはどのようにご自分や家族の利益を守るかを考えてみるとよいでしょう。

 平成19年3月30日の医療法人制度改革の厚生労働省医政局長の特留事項では、医療法人は開設する病院、診療所又は介護老人施設に必要な施設、設備又は資金を有しなければならないとする医療法施行規則第30条の34の規定について、その6(2)において「医療法人の施設又は設備は法人が所有する物であることが望ましいが、賃貸借契約による場合でも当該契約が長期間にわたるもので、かつ、確実なものであると認められる場合には、その設立を認可して差し支えないこと。」とされていることから、理事長である院長の家族の方が経営するメディカルサービス会社(MS法人)が診療所の施設建物、医療設備を取得保有し、医療法人に適正な賃貸料で賃貸し、当該MS法人の役員に就任しているご家族の方に適正な給与を支払うことは、何の問題も生じません。(現にこのような形態をとっている医療法人とMS法人は多数あります。)

 さらに医療法人の医療業務以外の業務について、別途人材派遣会社であるMS法人を設立し、同社から医療業務以外の派遣することも可能ではあります(医療関係業務は原則派遣禁止ですが、紹介予定派遣、産前産後休業及び育児休業並びに介護休業の代替要員の派遣は可能)が、医療法人の透明性確保の要請から、医療関係部門とそれ以外の管理部門等を分離し、後者の管理部門等をMS法人の業務委託することには何の問題もありません。

 したがって、医療法人のバックオフィスとして施設建物、医療設備を保有し、管理部門を請負うMS法人と、医療直接部門のみの医療法人を並存し、医療法人は非営利事業に特化して社会医療法人とすることが一番得策ではないかと思います。

 このことにより、MS法人の役員・従業員である親族の方には適正な給与を支給することができ、MS法人の資産は確実に相続人の方に承継され、しかも施設の敷地を保有する被相続人の土地の評価も小規模宅地で評価され(MS法人が施設を医療法人に貸し付けているときは、200㎡まで貸付事業用宅地の50%評価減、ただし特定居住用宅地、特定事業用宅地と併用するときはほとんど使えなくなる問題はありますが、MS法人が管理部門を請負っているときは特定事業用宅地と評価される可能性もあります。)、さらに一般的に取引相場のない株式等による評価も使えるので、極めて有利な取り扱いを受けることができます。

3 平成31年度改正の個人の特定事業用資産の納税猶予の創設

 法人の事業承継税制である非上場株式の納税猶予免除の特例では医療法人、士業法人等が除外されていたところですが、この個人の特定事業用資産の納税猶予は、資産管理事業(不動産賃貸業等)及び性風俗関連特殊営業を除く中小企業基本法上の個人が対象となることから、医業、士業等の個人事業の事業用資産たる土地・家屋・事業用償却資産に係る、相続税・贈与税の納税猶予、猶予税額の免除が一定の場合に受けられることになりました。このためには、令和3月31日までに事業承継計画書を作成し、都道府県知事の確認を受けたうえで、平成10年12月31日までの相続・贈与について適用が受けられます。

 しかし、この税制はあくまで納税猶予なので、例えば、認定相続人がその死亡の時まで対象とした特定事業用資産を使用し事業を継続していること(死亡するまで3年ごとに事業継続届を税務署に提出する必要あり)等の猶予税額の免除事由がない限り、猶予された相続税・贈与税を利子税も含めて最終的に納付しなければならないこともあるので、よく考えて適用する必要があります。

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
03-3782-2803

担当:杉本(すぎもと)

いつでもお電話ください
※来所でのご相談の場合は、事前にご連絡ください

東京都品川区戸越の杉本総合事務所です。品川区、目黒区、大田区を中心とした城南地区で,税理士及び行政書士の総合経営法務サービスを皆様にお届けいたします。
個人の方の事業の各種許認可から帳簿の記帳、決算,確定申告まで、また、法人の場合は設立から各種許認可、帳簿の記帳、給与計算、決算、確定申告、さらに、事業承継、相続までの一連のサービスをお届けするため、一生懸命汗をかいて、みなさまのお役に立ちたいと思います。

対応エリア
東京都区内(特に品川区、大田区、目黒区を中心とした城南地区)

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

03-3782-2803

ごあいさつ

代表の杉本です。親切・丁寧な対応をモットーとしておりますのでお気軽にご相談ください。

杉本不二男総合事務所

住所

〒142-0041
東京都品川区戸越三丁目11番12号
杉本ビル102

アクセス

都営地下鉄浅草線戸越駅 徒歩5分
東京急行大井町線戸越公園駅 徒歩5分

主な業務地域

東京都区内(特に品川区、大田区、目黒区を中心とした城南地区)