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こちらでは税務調査とその対応について紹介いたします。
〇税務調査とは
税務調査は、どうしても受けなければならないのですか?
平成24年の国税通則法改正前は、税務調査は、国税犯則取締法法(国税に関する犯則事件の調査手続、いわゆる査察事件の調査手続)を除き、各個別税法の「国税局及び税務署の当該職員の質問検査権」の条文により規定されていましたが、その内容は「必要があるときは、質問し、帳簿書類その他の物件を検査することができる。」として、明確な調査手続を規定したものではありませんでした。
この改正により、各個別税法の質問検査権の条文は削除され、国税通則法に「国税の調査」の章を新設し、国税の全税目に関する調査手続の条文が規定されました。(国税犯則法は変わってません。)
何が変わったのか、
①調査の事前通知が法定化されました。ただし「特定の要件があると認められるときは通知を要しない」旨の規定もあります。
②調査の終了手続が法定されました(調査結果の説明、調査による誤りがないことの通知、誤りがある場合の修正申告のしょうようと更正の請求の説明等)。
③提出された物件の留め置きの規定が新設されました。
④税務代理人に関する規定が新設されました。
⑤質問検査権の行使に際し、帳簿書類その他の物件の提示要求に正当な理由がなく応じなかったときの罰則(1年以下の懲役、50万円以下の罰金)の規定が新設されました。
「質問検査権が犯罪捜査のために認められたものではない」旨の規定と、質問検査権について、質問に答弁をぜず、検査を妨げ、忌避したときの罰則は維持されていますので、この質問検査権が行政法上の即時強制であることには変わりません。
したがって、税務調査は受忍義務(調査を受ける義務)があります。
ただし、調査手続が法定化されたので、改正前には無かった調査手続に反する違法調査の存在が明確になったと思います。例えば、調査の日程や場所については、納税者の方が合理的な理由により変更を求めたときは、協議することと定められているので、一方的に指定することは違法となりうること、また、無予告のいわゆる現況調査のときには、「税務署長等が、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合」という要件が、定められたことから、「おそれがある場合」に該当する理由の説明がなければ、違法調査の可能性があると思われます。
このような場合、適正な調査手続で調査を再度やり直すよう要求できるのではないかと思われます。さらに、違法な調査手続でなされた課税処分の取消しも求めることができると考えられます。
これに対し、国外財産調書の提出義務の根拠法令である「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(いわゆる「国外送金法」)は、国税の賦課徴収に関するものとは性質が違うことから、国税通則法の納税義務者に対する調査に関する規定の適用を受けません。
その結果、国外送金法では、国外送金等調書の提出義務がある者に対する調査については、従来の質問検査権がそのまま残されています。
平成27年の国外送金法の改正では、従来所得税法に規定されていた「財産債務の明細書」に関する規定が、「財産債務調書」と衣替えして、所得2千万円超かつ保有する総資産が3億円以上のときに財産債務の金額等を記載した調書の提出が義務付けられました。また1億円以上の国外転出特例対象財産を有するときも調書の提出が義務づけられました。
この規定の改正は、大きな意味があります。従来の税法に規定されていた質問検査権は、その税法に記載されている課税標準等(所得、課税所得、税額等)を確認するための帳簿書類等その他物件に限定されていた(所管する各法令の範囲を超えた包括的な質問検査権はなかった)のに対し、国外送金法では、「財産債務調書」を構成するすべての取引関係の帳簿書類等その他の物件に質問検査権が及ぶことになり、調査の対象者も調書を提出する義務のある者だけでなく、調書を提出する義務があると認められる者とされ、対象者の範囲が大きく広がっています。
さらに、調書の不記載や調書の不提出による国外送金法の調査により、各税法の申告漏れがあるときは、各税法の加算税のほか国外送金法の加算税5%が加算されます。
一番大きな問題は、この国外送金法の調査には、国税通則法の調査手続きの規定が準用されていないことから、事前通知及び調査の終了の手続きに関する規定の適用がないことになり、従来の質問検査権の運用が可能となっています。
つまり、財産債務調書の調査に関しては、無予告の調査(いわゆる現況調査)が可能となり、調査の終了も、あいまいなまま特に理由・結果の説明のないまま終わらせてしまうことが可能となってしましまうということです。
これに、マイナンバーの情報が社会保障と税のためであれば、金融機関に義務付けられる預金口座にマイナンバーを結び付け(マネーロンダリングや振り込め詐欺のような不正預金、脱税預金防止のためには必要でしょうが)、国税当局がどのようにでも運用ができるという解釈が加われば、とても大きな権限が与えられたということを、十分に認識しておく必要があります。
税務調査とは具体的にどういうことをするんですか?
税務調査というと、新聞でよく報道される脱税の摘発を担当する国税局の査察、証券取引所に上場されている大法人等の巨額の申告漏れを担当する国税局の調査部が有名ですが、その他にも国税局の資料調査課が多額の申告漏れが想定される法人、個人の調査を担当します。査察は基本的に上記の国税犯則取り締まりを目的としますので、刑事事件の手続きとなり、裁判所の令状により強制捜査をします。
その他の調査は、国税局の調査部、資料調査課も税務署の調査も国税通則法の調査手続きになります。
税務署には、調査の準備のための資料せんといわれる様々な取引に関する資料が大量に集積されています。例えば、源泉徴収票、支払調書等の法定調書、国外送金の調書、国外からの送金調書、登記所の登記事項、官公庁からの特別資料、その他に調査の際に税務署員が収集した取引資料、所得税、法人税、相続税の申告書等に記載された事項からの取引資料、金融機関等の反面調査の際に他の取引先の預金情報を収集した預金資料、一般の企業に取引に関する資料の提出を依頼し提出を受けた資料等の情報を、KSKシステムという大型コンピューターで名寄せし、調査対象者となった方の取引資料をアウトプットして、調査の際に活用します。(もっとも、誤った資料もあるようですが、マイナンバーの付された資料等であればより確実性が増すことになります。)
このような資料せんのある方が、無申告であったり、確定申告の内容(内訳書)に反映されていない場合には、調査対象者となる場合がとても多いです。調査対象者の選定は、資料せんの不突合、過去に不正があった(重加算税が課せられた)、売り上げが急増又は急減した、所得が急増した、特定の経費の計上金額が異常に多額等の事項をポイントとして、ポイントの高い方から優先して選定されるようです。(したがって、一度、重加算税を付加されると、繰り返し調査される傾向があります。)
また、事前通知なしに調査されることが多いのは、飲食業、小売業等の現金商売といわれる業種の方です。その他の場合は、資料せんに申告に反映されてない取引先や、預金があるときなどに多い傾向があります。
税務調査の際は、必ずこれらの資料に記載された事項と、帳簿に記載された事項のチェックをします。
税務調査の日程的な順序は、まず、概況聴取(担当者と社長さん方との会社の様子や商売の状況の他世間話で、問題点を抽出します。)が初日の午前中にあり、場合によっては会社の内部(工場とか店舗の様子)を確認する場合があります。(このときに、現場資料の確認として、調査年分とは関係ない現在使用中の帳簿書類・原始記録の提示を求めてくる場合があります。これを拒否できるかどうかは、通知された期間ではないので微妙なところです。)
そして、昼休みに帳簿を準備して、領収書などの原始記録をすぐに提示できるよう準備します。
通常であれば、午後から帳簿を閲覧し、問題点を抽出し、原始記録の提示を求めてきますので、問題点があるかないかチェックして提示しましょう。ただし、多くの場合、原始記録は、箱ごと置いて自分で探しますという担当者がいますので、事前のチェックしておいたほうが疑念を持たれません。
担当者によって異なりますが、1日目の終わりに、その日の調査事項による質問事項が宿題として提示され、2日までに調べるよう要請されます。(その場その場で質問し、すぐに回答を求める担当者もいます。)
問題がなく質問事項がなければ1日で終了しますが、質問事項が残れば、2日目、調査日程2日であればが2日目の終了時に質問事項におおむね回答できれば、それで調査が終了します。質問事項が残れば、後日回答するという宿題が残ります(3日以上の日程であれば、その繰り返し)。
以上が臨場調査といわれる事業所での調査です。その後、取引内容についての取引先に対する反面調査がが実施されることが多いようです。(電話で確認することが多いですが、場合によって、臨場により、取引先の帳簿書類を確認することもあります。)
なお、事業の内容が現金商売の場合には、現金監査という現金の有り高を実際に数える調査がなされます。(ほとんどの現金商売で現金監査は実施されているようです。この場合現金出納帳との記載状況の突合がされますので注意してください。)
臨場の調査終了後は、通常であれば委任を受けた税理士等の税務代理人が、税務当局と折衝し、誤りがなければ、更正すべき理由のない旨の通知を受け、誤りがあればそれに対応する修正申告をします。
税務当局との折衝が決裂した時は、更正処分がなされ、その内容に納得できないときは、異議申立て、審査請求ができます。最終的には、処分取り消しの裁判を提起することができます。
このように税務調査は、きわめて権力的なもので、すべてに対応するには専門的な知識と適切な判断力及び柔軟な対応力が必要となり、極めて疲れるものです。それゆえ、専門家である税理士に依頼したほうが無難でしょう。 〇税務調査では具体的に何が調査されるのですか?
資料との不突合事項は、まず間違いなく調査されます。
上記のように、税務署には多くの資料せんが集積されています。もし、特定の売上げ先や単発の多額の売上げを計上していないときは、覚悟していただいたほうがよろしいでしょう。経費の一部に架空のものを計上し、別の裏預金に隠していた場合も同様です。(1回の調査で見落とされていても、いずれ発見されます。それは脱税です。)
誤って計上していなかったときや計上の誤りに気づいたときは、早めに修正申告しましょう。先に修正申告すれば、なかなか不正とは認定しずらいものです。
ただし、不正と認定された時は7年間遡って調査されます。その結果、本税の他に重加算税(通常の過少申告加算税の3.5倍)と延滞税が全期間分課されることにより大変なことになります。
税務署の調査は不正発見重点主義で行われていますので、かなりしつこいです。(不正発見が調査官の評価の実績となるからです。)
売上の計上は、発生主義で正しく計上されているかは、必ずチェックされます。
当ホームページの他のページでも説明しましたが、税務調査で一番多い修正事項は、売掛金の計上漏れです。特に普段、現金・振込入金時に売上げ計上している方は、期末に売掛金を個別に拾って、決算整理により加算する必要がありますが、税務署の担当者はかなり細かいところまでチェックしますので、ご注意ください。また業種により、委託販売基準、請負における工事完成基準及び工事進行基準、長期割賦販売基準等計上の仕方や日にちが違っています。
さらに、請負の完成基準は、サービスの種類や契約の内容によって、引渡しを要する場合や検収を要する場合か単に役務の提供や仕事が終了した時点で計上すべきかは、事実を客観的に見ても判断するのが難しいときもあります。
売上原価、特に棚卸、仕掛は細かくチェックされます。
期末近く(決算期の1、2か月ぐらい前の期間)の仕入、外注費、労務費等の売上原価を構成する項目は、対応する売上げの計上のチェックもできるので、かなり細かく検討します。売上げの計上が翌期で正しく計上されていれば、棚卸、仕掛に計上されているか綿密にチェックします。
棚卸等は現在の状況も実地で確認することが多いので、整理整頓しておくことが必要です。また、廃棄したことにして棚卸・仕掛に計上しなかったものあるときに、税務署の担当者の実地確認時に発見された時は、棚卸除外と認定されることもありうるので、そのようなものは確実に廃棄しておきましょう。(そのような時は、税務上認められなくても、まだ評価損を立てておいたほうが良いと思います。)
また、販売管理費に計上した経費の中に、売上原価を構成するものがあるときは、決算整理に時に、合理的に按分するなど、適正額を売上原価に振替えておく必要があります。(これは忘れやすいので気を付けてください。また、特に建設業許可申請や経営事項審査のときに必要です。)
いわゆる他科目交際費もチェック項目です。
これは、法人税の調査に特有のことですが、交際費等は法人税の所得計算上一定額が損金不算入とされています。そして、法人税法上の交際費等は、通達等に細かく定められ、通常は会議費や会費とか福利厚生費ではないかと思われるものや売上原価に該当するものではないかとして経理処理するものも含まれているため、決算修正時にこれらの他科目交際費を拾って、交際費等に加算しておかなければならないからです。
個人的費用の付け込みは、税務署の担当者が大喜びします。
社長さんや役員さんの個人的費用やご家族の生活費、遊興費と認められるものについては、税務署の担当者が目の色を変えて探しています。
なぜなら、それは役員賞与として課税されるからです。どういうことかというと、このような場合の役員賞与は定期同額役員給与でないため、法人の所得計算上損金不算入とされ、消費税の課税仕入れが否認され、役員の方の給与の加算漏れとして所得税の源泉徴収の追徴がされ、そのうえ不正として重加算税が課される可能性が高いからです。(まさにダブルパンチどころではないです。)
また、個人経営者の方の生活費等の家事費が計上されているときは、このようなことはありませんが、否認されることに変わりはありません。
このように調査項目は無限ですべて準備しきれるものではありません。困ったときは、税理士に相談したほうが賢明です。
あと一つ税務調査で気を付けていただきたいことは、税務署の担当者(調査官)の主張や指摘事項又は修正のしょうよう事項は、必ずしも正しいとは限らないことです。
税務署では、職員に対し研修はしているものの職員の資質ややる気の問題で、勉強不足で税法に精通していない職員もいます。このような職員は、あいまいな知識や思い込みによる強引な主張により、納税者の方を強引に説き伏せようとする傾向があります。
国税通則法の改正による調査手続きの制定により、このようなことは減少するとは思いますが、強引に質問応答記録書(事実確認書)に署名押印を求めたり、税務署側の作成した申述書の提出を求められたときは、十分に検討したうえで対応(署名押印しないほうが賢明)するようにしましょう。安易に対応して、誤ったまま修正申告をしたりしないようにしてください。
もっとも、このような場合でも、更正の請求ができますので、是非当事務所にご相談ください。
ただし、安易な対応により重加算税を賦課決定されたときは、不服申立ての期間制限がありますのでご注意ください。
資産税の調査について
税務署の資産税部門は個人の方不動産の譲渡、株式等の譲渡による所得税、相続税、贈与税等の調査を担当しています。
不動産の譲渡や株式等の金融資産の譲渡による所得は、租税特別措置法による減税措置が複雑に絡み合っているので、判断を誤ると多額の税金が生じます。資産税部門の調査は、この判断誤りを各種資料や、具体的に現地の確認により判定します。
特に、居住用財産の譲渡等のときには、実際に居住していたか、居住用部分の判定は妥当かが確認の対象とされます。
相続税の調査は、相続財産がすべて網羅されているかの確認が、調査のメインですが、多くは、資料せんがすでにある程度集積されていて、申告漏れがわかっている場合が多いと思われます。
特に、税務署では大地主の方とか、大法人の株主役員の方等を大口資産家として管理し、過去からの資料せんを多数集積しており、かなり昔(人によっては終戦直後)からの資産の取得の資料をもっていますので、一部の相続人しか知らない財産もあるようです。
また、相続時精算課税による贈与があったにもかかわらず、これを忘れていたり、他の相続人に秘密にしていたりしたことから、申告漏れになる例もあります。
このようなことは相続人間に争いのある時によく見られることですが、後で痛いしっぺ返しとなることがありますのでご注意ください(極端な話、税務調査により相続財産の調査をする相続人もいるとのことです)。
また、海外の資産についても、海外送金等の資料の集積等によりかなりの確率で把握されるようです。
また、被相続人の方が、亡くなる前に、貴金属、絵画、骨とう品を相続関係者に引き渡してたとか、多額の預金が引き出されたり 不動産を譲渡した代金を相続人関係者が受け取っていたとかで、申告財産に反映されていない場合には、相続財産を隠ぺいした不正と認定されかねません。
さらに、被相続人の方の預金、株式等の口座の移動状況は、亡くなる前5,6年はさかのぼって調査されますし、当然相続人の財産の増減状況も調べますので、不明瞭な財産の移動は、相続財産逃れと認定される場合もあります。(特に、被相続人の方が認知症等で、長期に判断能力がないとき、相続人のした租税回避行為とされる可能性があります。)
相続税の調査では、所得税や法人税の調査とは違い、調査の事前通知の前に、すでに金融機関の反面調査は終わっています。金融機関は決して味方してくれません。むしろ金融庁にコンプライアンスを要求されていますので、不正への荷担はしずらいのです。なかなか逃げ切れるものではありません。
相続税は、多くの減税措置、評価の減免、納税の猶予等があります。そして、その要件が多種多様にわたっていますし、評価の方法も非常に複雑なので、調査担当者が現地確認、現物確認等をしたうえで、事実確認をして、適用要件の有無を綿密に検討するようですので、付け焼刃で要件をクリアしようとすることは、かえって逆効果になることもあります。(否認されて、重加算税をかけられてしまう危険があります。)
結局、相続税は、生前からの相続対策の一環として準備しておく必要があります。総合的な相続対策をおすすめします。
担当:杉本(すぎもと)
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